« それでも存在する | トップページ | 一つの方法として »

12/08/2017

時代が戻ってる?

「いかがわしい」バルテュス作品、展示に非難で署名9000人(Yahoo!:JIJI・AFP)・・・別記事には「8000人」というのもあったりしますが。いずれにしても一定数以上の人が「いかがわしい」と思った(少なくともそれに賛同する署名をした)ということになります。
バルテュス(Wikipedia)
1900年代に活躍したフランスの画家で本名はバルタザール・ミシェル・クロソウスキー・ド・ローラ (Balthasar Michel Klossowski de Rola) ちなみに日本の方と結婚したりしています。
一種独特?な雰囲気のある画風で、どこか哀しみを帯びているようにも思えますが・・・たしかに少女や裸婦を描いたものも多かったりします。

・・・でもこれで「いかがわしい」どうこう言われてもなあ、というのが正直なとこで。
実は「絵画」というのは本来は・・・と言うかヨーロッパで中世頃には基本的に「宗教画」オンリーでした。キリスト教の各名場面を描く。しかしそれだけじゃあ、ちょっと面白くないなあ・・・ということで色々描き始めたのが「ルネサンス」の時の波の一つでありました。これ以降、宗教画ではない、画家の「発現」の場としての絵画が増えていきます(もちろんこれは絵画だけではなく様々な芸術にも影響を与えていきます)。
そうなると・・・やっぱりエロの方面にも進出?していくんですが。
さすがに当時そこまではダメだろ、ということで「人間の裸はNG」ということになります。じゃあ、何の裸ならいいのか、となると「神話上の登場人物」つまり「実在しないキャラ」ならOKということになりました(それでも「いや、ちょっとここまでは・・・」的な修正が入ったものもあるにはあります)。

その後時代が進むと芸術はどんどん自由になっていきます。そもそもヨーロッパ以外の地域では別に宗教画限定ではなかったわけですし。アフリカやアジアなどそれぞれの文化がそれぞれと交わっていくことで変化は加速していきました。今ではその頃のような「規制」はほとんどないようなものなんですが・・・。
ここへ来て「人の好み」という芸術の最大根幹によって「規制」される、という・・・何とも皮肉な、と言うか。過去の「これは宗教画じゃないじゃないか!」的な嫌悪感再来、と言うか。

イヤなら見なきゃいい、というのは至言なんですがなぜか己の感覚を相手に押し付けようとしたがる、と言うか。賛同者を容易に集めることができる、というのもその一因かと思いますが・・・こんなことが続けばどんどん萎縮していくかも知れません。みんな同じような絵画に彫刻に文芸。そんなの・・・面白いですか?
・・・ただ、今回の救い?は「メトロポリタン美術館に近い消息筋によると、作品の撤去や解説文の修正を行う予定はないという」(「」内↑記事より引用)心強いコメントであります・・・。

01:00 AM | 固定リンク