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03/27/2015
しろばこによせて(ネタバレ?注意)
*アニメ「SHIROBAKO」に関する記述があります。ご留意ください。*
約一年のお付き合いでした。見る前は「あ、いろは(花咲くいろは)のところが制作か・・・」という程度だったんですが。ここまでクルとは思っていませんでした。
テーマは「働く女の子2」だそうで(1が「いろは」)。
アニメ業界で「働く女の子」の話でありました。リアルかどうか、というのはその業界にいるわけではないので分かりませんが・・・少なくとも観る側としては「リアル」に観てました。・・・ツイッターとかでは「身につまされる」とか「身近すぎてイヤだ」というのも結構散見しましたが。
これはここんとこ(いやかなり前から・・・?)考えている「創作物をリアルに描くには」という命題めいたもんに対する一つの答えかな、とも思ってます。個人的に、ですが。
例えば「あんなにかわいい子ばっかのはずねえ」とかそういう声もありましたが・・・その辺は実はどうでもいい話で。アニメにしたかったのはあくまでも「働く女の子」ならそういう「添え物」的要素があっても全然構わないわけです。ただ、そのサジ加減が非常に難しい。
・・・本当に「リアル」のみを追求したらあれだけの人気が出るわけはないのでは、と。だってあんだけトラブル連続させておいてきちんと「笑」「泣」「握る」を成立させて、さらにそっち方面へも配慮してある。その辺も純粋にスゴイな、と(「笑」「泣」「握る」というのは某創作系の人の至言で「創作てのは笑って泣いて手に汗握れればそれでいい」的なものからであります)。
リアルにはほんのひとサジのウソが必要であります。もちろんウソ入れすぎたらリアルでなくなってしまう。
かの杉田玄白が解体新書を著す工程を記した「蘭学事始(蘭東事始)」に「フッフルヘンド」を巡る記述があります。前野良沢や中川淳庵らと共に「フルヘッヘンド」なる謎の単語の解明に取り組む。顔の一部のことらしい。ふと、別の書物に「落ち葉を集めるとフルッヘンドする」という記述があり「ではこれは『うずたかく』という意では」となり「顔の一部でうずたかいのは『鼻』だ・・・」となった、という話なのですが。
・・・が、後に解体新書の原著とされるターヘル・アナトミアを訳した研究者によれば原著には「フッフルヘンド」の記述はない、という・・・これはリアルさを高めるためのひとサジのウソではないか、という解釈もできるわけです。
まあ、そういう創作面でのお話もあるわけですが・・・そういうとこではない方面でも色々と面白かったし、楽しいアニメでありました。なんだか「作る側」と「作りをまとめる側」がきちんと、丁寧にかみ合っていた・・・と言うか何と言うか。少なくとも劇中にあったような各方面との齟齬は・・・いや、あったんだろうなあ・・・色々と。
ただ、これは明らかな「余計なお世話」なんですが。
続編とか映画化とかそういうのは・・・どうだか分かりませんが。しかし「働く女の子3」を今後作るとしたら・・・思い切りハードル上げちまったんではないか、と。「いろは」もかなり良い作品でしたがあれは「物語」であって「リアル」ではないような。でも「シロバコ」はリアルを(もちろんウソを隠し味に)ここまで追求してしまった。
「けいおん!」辺りから「日常系アニメ」というのが定着してきて、後発がいくらでも出てきました。しかしどんどんハードルが上がっていって最近ではやや伸びが悪い?ような気がしています。・・・この方向も似たようなことに・・・?
いや、それならそれでまた違う方向性を示すまで・・・かな、と。全ての創作はそうやって今の多様性を手に入れてきたのですから。
01:11 AM | 固定リンク