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04/26/2011
まどか☆ほむら(ネタバレ有)
色々と話題のあったアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」がこないだ終わりました。…自主規制と言うか自粛と言うか、震災起きた後から10話~12話(関西・動画サイトは11話~12話)を停止。ちょうどラストへ向けて盛り上がるところでいつ放送されるのか、放送されないんじゃないか…と言われてましたが関東でも無事?放送されました。
…実際にはちょっと修正した部分もある、とされていますが(避難所のシーンとか)本筋とはそれほど関係ない部分かと思われます。
ストーリーは、謎の白い小さな生き物「キュゥべえ」に何か一つ願い事をかなえてもらう代わりに魔法少女として契約して魔女と戦っていく、というお話になります。…これだけだとフツー?の魔法少女っぽいんですが。何しろキャラクター原案が蒼樹うめ、 監督が新房昭之、総作画監督が谷口淳一郎に高橋美香、でしかも制作がSHAFT、という豪華な顔ぶれ。どういうことになるか、ありふれた甘々な魔法少女物か、と当初はそんな声もあったんですが…。
シリーズ構成・脚本が虚淵玄、という辺りで。知ってる人はかなーりダークになるんでは、と予想していたそうですがまさかあんな風になっていくとは。
魔女とは使い魔と共に人間を害し、殺すこともある存在。その魔女を倒すのは魔法少女たち。しかしその実態は自身の魂を抜き取られ「人間」と呼ぶのもためらうような存在。しかも実際は抜き取られた魂の汚れがMAXになる=絶望すると魔女になってしまい、魔法少女どころか人間だった頃の記憶も何もかもなくして破壊の限りを尽くすようになってしまう…。
さらに契約を迫るキュゥべえは自分たちの種族が生き永らえるために他の星から来て「少女が希望から絶望へと突き落とされる時に生じるエネルギー」を収集するためにきた「インキュベーター」であり、はるか昔から何体も何体もいて、魔法少女を生み出し、そして魔女も生み出していた、と。
そこには何の感情もなく(自身もその方面を責められると「わけがわからないよ」と呆れ顔)他者への哀れみとか共感とかそういうのは一切ありません。ただただ作業として必要なエネルギーを得るためだけに少女達を魔法少女へ、そして魔女へと変化させていたのです。
…いや、正直なとこ、観続けるのがかなりしんどくなってきてたんですが、途中で。そのため今でも特にDVDとか欲しいとは思わないんですが…前半の落としっぷりが激しくて激しくて。でもその分後半、特に10話での暁美ほむらの真実を知った時には衝撃でしたねえ…。
暁美ほむらは主人公・鹿目まどかがキュゥべえの本質を知らず、無邪気に魔法少女になろうとしているのを力づくでも止めようとします。それは…一番最初(正確には違うような)にまどかに会って、そして最大最強の魔女ワルプルギスの夜によってまどかも皆も死んでしまったから。その「時」にキュゥべえと契約して時間を遡れるようになって…過去のまどかが魔法少女にならないように活動していました。まどかが死ぬ、という最悪の結末のたびに時間を巻き戻して…何度も何度も。まどかが魔女化してしまったり魔女化する前にまどかを撃ち殺したことも。それは…永遠に続くかと思われるループでありました。
実は個人的には「まどか」は非常にありふれた題材だけで作られていると思ってます。手垢のついた題材ばかり、と言うとちょっとイメージ悪いですがそんな感じで。ほむらの「ループ」というのもSFではよくある手法ですし、まどかとほむらの行動をちょっと重ねてみて「ああ」と思わせるとか。魔法少女の魔女化、というのも正義の味方が結果として悪の勢力に飲み込まれてしまう、というのもよくある話ではあります。あるいはテーマが「希望」と「絶望」てのも…。
やはりよくある題材の一つに「因果」というのもあります。ほむらが何度も何度もまどかに干渉していったことによって(時間的に言えばまどかへの干渉は一回だけ、ですけどそれぞれの時間軸のまどかを束ねる、とするなら何度も何度も)まどかの力が非常に強力なものになってしまい…キュゥべえの望む「最凶の魔女」になれるほどになってしまった…。
そしてラスト。負傷し、しかし時間を巻き戻せばさらにまどかの力が増してしまう。もう自分ではまどかを助けられない、守れない…。ほむらは絶望に飲み込まれそうに、魔女になりそうに。…そこへまどかが。そしてキュゥべえと契約を「全ての魔女を生まれる前に戻して」、と。
つまりは魔女が生まれる直前にまどかが魔法少女たち(過去も未来も全員)その「絶望」を引き受ける、そのため魔法少女達は魔女になることなく消えてしまう。それが果たして「良い」ことなのか「悪い」ことなのか、その辺は分かりません。
でも…それにより「希望」は残ります。「絶望」のみで魔女になって暴れるよりは…まだ…?
…実はまだちょっと納得と言うか理解しきれてないなー、というところもあったりするんですが(ほむらとまどかの本当の関係とか)…まあ、それも含めて「まどか」なのかな、とか。
前にも述べましたようにこの作品の素材はほとんどがよく目にするものばかりです。でも…ここまで衝撃を与えられるということはその「調理法」が優れている、ということになります。しかも素材の持ち味をきちんと生かしている。調理法としては日本料理のようなものかと。特定のソースやスパイスで味を統一するのではなく、素材それぞれの味を生かして共演させていく手法、というところでしょうか。
目新しいことだけを連ねるのではなく、どんな題材・素材でも生かし方がある。それには多分に才能が関わってくると思います(↑のスタッフ陣が豪華すぎる…)。でも、いつかは自分もそんなレベルに達することができるんじゃないだろうか…そんなことを思わせてくれた作品でありました。
最後に。…声優ってのは…すごいなあ、と素直に驚嘆してしまった作品でもありました。特にほむら役の斎藤千和さん。他には明るい役だったり幼い役も多かったりするんですが…表現の幅の広さが尋常じゃなくて、一言「スゴイ」です。
01:38 AM | 固定リンク