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03/16/2007

じしょの原稿

群馬の古書店で日本初の英和辞典の原稿が発見されました(Yahoo!:時事)。束ねた古紙として仕入れたもの中に混じっていた、とのことで…やはりこうやっていつのまにか散逸してしまうもんなのかも知れませんが…今回は良かったなあ、と。貴重な資料ではありますし。

発見されたのは「英和対訳袖珍辞書(えいわたいやくしゅうちんじしょ)」という文久二年(1862年)に堀達之助によって編纂された辞書の原稿です。…この辞書は元々「新ポケット英蘭辞典」(H.ピカード編)という英語→オランダ語辞典のオランダ語の部分を日本語訳していったものでした(原題からして"A New Pocket Dictionary of the English and Dutch Languages"、袖珍てのはポケットの意なんだとか)。
実際に膨大な量の単語を集めたりまとめたりする手間が省けて簡単そう?に見えますが、こういう編纂作業てのは一人では絶対に出来ませんし、時間と情熱が必要になります。ましてや日本初ですし。
ではそのオランダ語を日本語訳するのに使われた可能性のありそうな辞書は、と言うと…やはりハルマ和解でしょうか。江戸ハルマとも呼ばれるそれは寛政八年(1796年)に編纂作業を終了、コンパクトにまとめられた「訳鍵」まで発行されました。1857年にはその訳鍵の増補版「改正増補訳鍵」も発行されてます。
一方でズーフ・ハルマ、つまりオランダ商館長だったヘンドリック・ズーフが協力して完成させた蘭日辞書があります。こちらも「改正増補訳鍵」と同時期に「和蘭字彙」となって改訂版が出たりしてます。

…って、以前にも書きましたっけか、ハルマ関係。
その江戸もズーフもどちらもフランソワ・ハルマという人が編纂した蘭仏辞典の「仏」を「日」と入れ替えていく…という作業をやってます。その時も当然ながら何かの辞書が使われたはずでしょうし。日本で初めての本格的な蘭日辞典、となると両ハルマになりますが…断片的ならいくつかあったわけで。そういうのをも全部編纂し直さないといけないわけです。
なお。前野良沢と杉田玄白が中心となって訳していった、とされている「解体新書」。この当時はまだこういった本格的な辞書は日本には存在してませんでした(何せハルマ和解編纂の中心人物稲村三伯の師が大槻玄沢。この人は杉田玄白の「玄」と前野良沢の「沢」から名前をもらった二人共通の弟子。…実は三伯と年代はそれほど変わらないらしいのですが…)。

そう考えると辞書てのも…単純にスゴイなあ、とか思ってしまったり。英和だけじゃなくて国語辞典や漢和辞典でもやはりこういう歴史てのは存在してるんでしょうし…。

11:51 AM | 固定リンク

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